Živnostenský listとは、基本的にチェコ国内で起業したり個人事業主として働く際に登録必須の、いわゆる開業届です。
ビジネスビザを取得するのに必要な他、副業をする際に求められることがあります。
この記事ではチェコでビジネスビザを取得したり、本業のほかに副職をする際に必要となるŽivnostenský listについて、基本的な情報をまとめています。
Živnostenský listとは?
Živnostenský list(英 Trade license、以下Živno)は、冒頭でも解説したように、チェコ国内で個人事業主として働く、もしくは起業する際に登録しなければならないもので、日本の開業届のようなものです。
日本の開業届は提出が任意ですが、チェコにおいてはŽivnoに登録した業種以外を請け負うことは認められていないため、登録必須と考えておくといいでしょう。
Živnoに登録すると発行される個人識別番号(Identifikační číslo osoby、IČO)により、インターネット上にあるŽivno事務所のデータベースにて、Živnoの登録状況や登録している業種等が確認できます。
そのため、仕事の受託に先立ってIČOの確認を求められることがよくあります。
万が一受けようとしている業種で登録していなかった場合でも、必要に応じて業種を追加登録できますのでご安心ください。
Živnostenský listの取得条件
外国人がチェコでŽivnostenský listを取得するための基本的な条件は以下のとおりです。
滞在許可については、有効な長期滞在許可があれば、滞在目的がビジネス以外であってもŽivnoの取得は可能です。
ただしŽivnoを取得したからと本来の滞在目的を疎かにした場合、滞在許可の延長ができない、もしくは滞在許可が取り上げられる可能性もあります。
注意点として、長期滞在許可の滞在目的をビジネスに変更するには、次の2つの条件を満たす必要があります。
- 有効な長期滞在許可を持っている
- チェコに5年以上継続して滞在している
チェコの滞在期間が5年未満でどうしても滞在目的を変更したい場合は、新規でビジネス目的の長期滞在許可に申請することになります。
ただし、新規で長期滞在許可を取得し直した場合、それまでの滞在期間が一度リセットされます。
個人での永住許可取得を目指している場合は、継続滞在期間の計算がゼロからのやり直しとなる点にもご注意下さい。
Živnostenský listに登録可能な業種と登録条件
チェコでは、Živnostenský listに登録していない業種で収入を得ることは許可されていません。
そのため、Živno登録時には自分が将来的に受けるかもしれない業種もあわせて登録することが推奨されます。
Živnoに登録ができる業種は多々ありますが、基本的には3つの分類に分けられます。(各業種およびそれぞれの定義・ガイドラインについては、リンク先を参照してください。)
- 資格等が不要な一般的な業種(Google翻訳)
語学教師、翻訳・通訳、ツアーガイド、IT関連を含む一般業種 - ガイドラインがある技術職(Google翻訳)
時計技師、ガラス職人、マッサージ師、理髪師・美容師等などを含む技術職 - 資格等が必要な専門職(Google翻訳)
教習所の教師、金融関係、医療関係、生物取り扱い、山や水辺での活動などを含む専門職 - 要ライセンスの特殊職(Google翻訳)
酒類・危険物取扱い、輸送関連などを含む特殊な業種
※リンク先はチェコ語サイト、Google翻訳はチェコ語→日本語です
語学教師や翻訳・通訳、プログラミング系IT業務、ツアーガイドなど、基本的なフリーランス業種であれば資格不要業種に含まれているのであまり問題はありません。
登録を希望する業種がどれにあたるかわからない場合は、最寄りのŽivnostenský úřad(トレードライセンス事務所)に問い合わせるか、Živno取得サポートエージェントにご確認ください。
Živnostenský list登録で生じる義務
Živnostenský listに登録すると、個人事業主・起業家として以下の義務が生じます。
- 社会保障保険への参加
- 公共健康保険への個人事業主・起業家としての保険料支払い
- 納税
以前はŽivnoの登録完了後に、それぞれ健康保険会社、社会保障事務所、財務当局にてそれぞれ手続きする必要がありましたが、現在はŽivno登録時に希望すれば、すべての手続きを一括で行うことも可能です。
何らかの事情で個別に手続きをしなければならない、という状況でないのであれば、Živno登録の際に手続きを依頼するのがいいでしょう。
それぞれの手続きが完了すると書類が郵便で届きます。
そのためŽivnoの手続きが完了した後は、少なくとも週に1度は郵便受けを確認するようにしましょう。
社会保障保険への参加
Živnoに登録すると、自営業者(Osoba samostatně výdělečně činná、OSVČ)として社会保障保険への加入義務が生じます。
社会保障保険には年金や失業保険が含まれており、傷病保険(傷病休暇・出産/育児休暇等)は任意加入です。
社会保障保険を統括しているのがチェコ社会保障局(Česká správa sociálního zabezpečení、ČSSZ)。
ただし実際に手続き等をする事務所は、プラハではPSSZ(プラハ社会保障局)、その他の地域のものはOSSZ(地域社会保障局)のように区別されています。
保険料は、初年は最低額(2020年は2,544 CZK)を、確定申告後は前年の納税額を当年の納税額と仮定し、その額から算出された保険料を毎月前納の形で、当月末までに支払います。
実際の収入との差については、確定申告時に追納もしくは返納されます。
公共健康保険の支払い
どのような形でもチェコに滞在する人は、すべて健康保険への加入が義務付けられています。
永住許可やEU市民家族の滞在許可等により公共健康保険に加入している場合、保険料種別が自営業(OSVČ)に変わります。
自営業者としての保険料は、初年は最低額(2020年は2,352 CZK)を、確定申告後は前年の納税額を当年の納税額と仮定し、その額から算出された保険料を毎月前納の形で、翌月8日までに支払います。
実際の収入との差については、確定申告時に追納もしくは返納されます。
ビザや長期滞在許可で滞在していて外国人向け傷病保険を購入している場合、この項目は対象外です。
納税
個人事業主の場合、報酬は基本的に税込み金額であるため、納税は自分で行わなければなりません。
チェコの税年度は日本と同じく1月1日から12月31日で、確定申告は翌年の3月31日までに行う必要があります。
納税額の算出方法は、基本的には日本と同じく収入額から経費や控除額を差し引いた金額に、売上金額に基づいた税率をかけるというものです。
ただしŽivnoに登録している場合、60/40ルールと呼ばれる全収入の60%を経費として自動計上することが可能になります。
この計算方法を使用した場合、とても大きな節税効果が期待できるのですが、納税額が低すぎる場合、ビジネス目的のビザや長期滞在許可延長申請や永住許可申請の際に、十分な収入がないと判断されて延長申請を却下されるケースがあります。
ご自身の滞在許可種別や状況に応じて、適切に納税するように気を付けてください。
おわりに
Živnostenský Listについての基本情報は以上です。
すこし面倒くさかったり堅苦しく思えるかもしれませんが、ビジネスビザの取得を考える場合には大使館等での面談にてŽivnoに関する知識の確認もされるため、知ってなければならない内容でもあります。
ビザ申請時の面談対策も必要なことからも、身近に詳しい人がいてサポートしてもらえるのでなければ、ビザ取得サポートエージェントに頼ることは早い段階から選択肢に含めておくべきです。
基本的な内容であれば筆者も情報提供は可能ですので、何かご相談があれば下のリンクボタンよりお問い合わせください。
ヒサノアスカ
アメリカ語学留学、オーストラリア&カナダワーホリ、デンマーク留学ののち、チェコ語学留学から現地採用を経て、5年以上の継続滞在によりチェコ永住権を自力で取得。
現在はプラハでフリーランスとして活動する傍ら、海外移住・旅行情報発信ブログa-h.workおよび当チェコポータルを運営中。